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どんなにきついときでも上機嫌な身体でいられるか。 料理人に必要なのは、腕や才能だけではない。
テクニックやセンスが、料理の世界で食べていくために決定的なものではない。 笑顔こそがまさに、料理人として社会との接点を結ぶ「瀬戸際の防波堤」たることを、Tは知っていたのだ。
ところで、上機嫌のシンボルである笑顔には、もう一つ重要な意味がある。 私は先日、「どこで笑うかにその人の知性が現れ、どこで悲しむかにその人の感性が表れる」という言葉を思いつき、至言だと悦に入っているところだが、なぜ笑顔に知性が表れるのかなぜなら、笑うということだけで充分な理解の表現になるからだ。
相手の言っていることを把握し、また相手の人格も受け入れたというサインを、笑顔を向けることで上司や同僚に対して一部することができる。 ここぞというところで笑ってみせる、座が煮詰まったのでにこにこと朗らかに雰囲気をほぐしてくれるとなると、場の空気をつかんでいることがはっきり伝わる。

笑いの取り入れ方は、コミュニケーションにおける文脈力だ。 上手に笑えるだけで、の人は充分な表現力、仕事力を持っている証になる。
場に求められている文脈を読んで段取りが組めますよというメッセージにもなっているわけだ。 仕事は詰まるところ、どこか遊びが混じった気持ちでやれたら理想的だ。
そんなメンタリティを身体に刻んでおけば、仕事のどんな困難に直面しても、わくわくするような華やいだ感覚は消えないだろう。 「祝祭感覚」とでも呼びたい仕事力である。
そんな祝祭感覚で仕事をしていた代表格に、Mがいる。 Kは、子どもたちを教えるとき、鳥が歌うような気分で楽しく仕事をしていたことを、こんな詩にして綴っている。
この四ヶ年がわたくしにどんなに楽しかったかわたくしは毎日を鳥のように教室でうたってくらした封言ってわたくしはこの仕事で疲れをおぼえたことはない(「生徒諸君に寄せる」より)この美しい詩は、子どもたちに贈った言葉だ。 Kは花巻の学校教諭時代、収入の多寡とは無関係に、疲れ知らず活き活きと生徒に向き合っていた。
そういう人に子どもたちは寄っていく。 また、そういう気持ちの先生が教壇に立っていると、子どもたちは浮き浮いよいよみんなで小鳥がさえずるように楽しく授業ができる。
きした気持ちになって、歌うように働くというのは、一緒に過ごしている人たち、ともに仕事をしている仲間たちとの時間や空間を、満ち足りたものとして感じているからこそできることだ。 同時に、その充足感が周囲に伝わるように表現していることも意味している。

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